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H17年度社員教育資料 ループゲインと位相
水晶発振回路のループゲインと位相のグラフを示
水晶発振回路-1 す。直列共振ポイントがリアクタンス成分ゼロで抵
抗成分ーRのポイントである。このポイントが位相1
・CMOSインバータを使用した水晶発振回路 80°のずれとなり ICの位相ずれ180°とで36
CMOSを使った水晶発振回路を示す。 0°の位相になるので正帰還がかかり発振を持続
① Rf することになる。
抵抗のRfはCMOSインバータにDCバイアスを与える帰還抵抗で
ある。 一般的に KHz帯の発振の場合は10MΩ、MHz帯の発振 ③Rg
には1MΩ程度が使用される。 この抵抗は帰還量をきめるもので、負性抵抗の
調整を行う。帰還量が多いと第3次共振周波数など
②発振条件 Rg のオーバートーン発振を防止するなどに使われる。
発振条件としてループゲインG、及び、移相量は 値はカタログ推奨値を採用するのが望ましい。
G = αβ ≥ 1 直列共振
並列共振
θ = θ1 +θ2 = 360°× n(n = 1, 2,⋅⋅)
ループゲインと位相
ループゲインG
ICの増幅率と、RG抵抗及び水晶発振回路での減衰量(帰還量)によっ
て決まるループの利得で、1以上ないとループで消滅してしまう。 +j
90°
移相量 θ
270°
ICの入力端子の信号が帰還されてICの入力端子に戻ってきたときの位 ④発振周波数
発振は、直列共振付近で生じるが、外部に接続する
相のずれが360°になると正帰還となって発振する。 CLによって共振周波数をわずかに移動することが可
能であり、前頁で求めた fr fa の回路のC0に外部付
ICが反転回路なので180°ずれているので水晶発振子(Lとして動作)と 加CLが追加されたと考えればよい。
CL1とCL2は、高周波的には直列接続された合成容
付加コンデンサにによる回路で180°位相がずれると発振する。 量CLがC0に並列に追加されたと考えられる。
ので 発振周波数は次式で表される。
180°の移相 180°
水晶発振子にて180°の位相のずれを生じさせるには、右のインピーダ -R +R
ンスベクトルで考えると 水晶発振子がリアクタンス成分ゼロで抵抗成分
が負になれば良い事がわかる。
Z=-R+j0
の状態になればよい。リアクタンス成分ゼロとは、L成分とC成分が打つ 前頁の式 fa = fr ⋅ 1+ C1
より C0
消し合う共振状態になればよい。
負性抵抗(ーRについて) -j
ーRの負の抵抗とは、負性抵抗と言われる。抵抗は電力を消費する素子であるが、負性抵抗は電力を生み出す fa = fr ⋅ 1+ C1
C0 + CL
抵抗と考えることができる。接続した増幅回路から水晶発振回路の共振抵抗で消費する電力相当分を供給する抵
抗と考えられる。
付加したICの増幅回路によって共振回路で消費する電力相当分を補って発振が持続できることになる。
安定に発振させるために、水晶発振子の共振抵抗の5~10倍の負性抵抗が必要である。
負性抵抗とは、電圧が減少するにも関わらず電流が増加する性質と考えることができるので
図のインバータの回路において正の波形が入ったときに出力は 負性抵抗の考え方
電圧が減少するが、出力電流が増加すれば負性抵抗の系と考
えられる。出力が減少しても共振状態であれば共振インピーダ 正に変化 負に変化
ンスが最小になるので電流は増加することになる。この状態は 共振電流増加
負性抵抗と考えることができる。共振状態だからリアクタンス成
分はゼロで抵抗成分はマイナスと見ることができ
Z=-R+j0 の状態を形成することになる。
負性抵抗の確認
負性抵抗の大きさが発振余裕度になるので発振回路の余裕度を見るには
発振回路の負性抵抗を知る必要がある。水晶発振子メーカー等から負性抵
抗の確認法がでているが
①可変抵抗VRを直列に入れて、発振停止状態から発振開始まで可変抵抗を
変えて行く。発振開始時のVRの値が負性抵抗(-R)となる。
②発振回路の余裕度をとるには負性抵抗が水晶発振子の共振抵抗値の5~
10倍になるように、C1、C2、Rd を調整する。