Page 10 - 第4部応用事例編ver60_Neat
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ICカードアンテナ周辺回路構成 並列共振 ・並列共振フィルタ L=0.7u L=0.7u
直列共振 C=20P C=30P
・アンテナ駆動トランスの並列CRの働き L=0.7u f=42.5MHz f=35MHz
差動増幅回路による差動出力部のアンテナ駆動トランスに並列にコン C=10P
デンサと抵抗が挿入されているのでこの働きの動作を述べる。 f=60.2MHz 共振周波数?
・不要輻射
パルスで生成された13.56MHzの伝送キャリアを差動増幅器で共振させる
ので13.56MHzの正弦波形に近い波形が得られそれがアンテナに供給され
る。しかし元々パルス波形には第n次高調波が含まれている事。また共振回
路では正弦波形に近いものの回路による歪が生じて高調波が含まれていると
考えられる事などから高調波がアンテナから外部にもれこれが不要輻射とな
る。
13.56MHzの高調波は
基本波 13.56MHz 第4次高調波 54.24MHz
第2次高調波 27.12MHz 第5次高調波 67.8MHz
第3次高調波 40.68MHz
である。次数の少ない程パワーが大きいので第2、第3次高調波あたりが外部 上図にトランスT1のインダクタンス(0.7μH)とコンデンサCの並列合成インピーダンス
に不要輻射(スプリアス)として出やすいのでこれらがでないようにフィルタが の周波数特性を示す。並列共振は、共振時にインピーダンスがQ倍と非常に大きくなる
必要になる。 特性がある。これは共振時にはアンテナ駆動トランスに電流が流れないことになるので
図に13.56MHzの発振源のスペクトラムを示す。デューティ50%波形の場 共振周波数特性を選択すればその周波数を通さないトラップとして働くことになる。
合は偶数高調波は出ないので奇数高調波が出ているのが見える。 ・C=10p
差動増幅トランジスタのエミッタ側の電流波形には偶数高調波が出現しているの Qが高いが共振周波数が高いので、第2/第3高調波のトラップとしてはきかない。
が見られる。 ・C=20P
Qが下がるが第2高調波~第5高調波のトラップとしてききそうである。
13.56MHzの発振源のスペクトラム 差動トランジスタのエミッタc電流のスペクトラム ・C=30p
Qが下がりすぎて基本波もCの方に流れてコイル電流が減少していく。
3.0V 150mA 基本 この特性をみると20pF前後で第2~第5高調波のトラップとして動作すると考えられ
100mA 波 る。しかし本来の直列共振回路に影響する内容であるのでカットアンドトライも必要だ。
基本
2.0V 波 第5高調 50mA 第2高調 第4高調 060302 KYOUSIN 基本波
波 波 波 42.4MHzG
第3高調
1.0V 波 SEL>> -I(R4) R1 1 VP
0A 5 L1
SEL>> 0.7uH
0V 20V V3 VDB
V(V5:+) 2
20V 1Vac C1
0Vdc 20p
差動トランジスタのコレクタ電圧のスペクトラ
ム
10V 10V
基本波 0
0V 40MHz 80MHz 101MHz 0V 50MHz 75MHz ・並列共振回路部の周波数特性のORCAD
0Hz Frequency 0Hz 25MHz Frequency 波形を示す。20PFの場合共振周波数が4
V(Q2:c) V(Q1:c) V(Q2:c) V(Q1:c) 2.4MHzではR1に電流が流れていない。
・位相特性によると
・フィルタ 99MHz 並列共振周波数以下ではこの並列回路は
高調波の飛び出しを軽減するために高調波成分を通過させないために通常 L成分が強くなるので直列共振回路のLとし
フィルタが挿入される。 て機能するが、並列共振周波数以上ではC
今回の回路構成では差動共振回路のアンテナへの出力トランスTに並列に 成分が強くなるので直列共振回路動作に影
CRが接続されているので、この回路がフィルタの役割をしている。 響が現れる。
差動共振回路はトランスTのインダクタンスとC3とC4のコンデンサが直列共 ・言い換えると並列共振周波数を低くすると
振を形成していた。13.56MHzにおいては直列共振の結果トランスのTの両 (並列のCを大きくすると)直列共振周波数の
端の電圧が増幅されその結果大きな電流がアンテナに流れる。共振のQはあ 動作が乱れてくることになる。
まり高くないので13.56MHzの共振帯域幅が広く選択度がよくないので、N
次高調波部分まで増幅されてアンテナへ電流が流れる事も予想される。した
がって基本波の増幅は行い基本波以上の次数は阻止する急峻なフィルタが
必要である。急峻なフィルタとして先のCとトランスTの並列共振を使ってフィル
タが構成されている。